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防災のポイント・提言集

現実を踏まえつつ、バランスの取れた長続きする防災意識を ポイント
防災対策は、災害国日本に暮らすマナー  

 家族が健康で日々何事もなく無事に過ぎれば言うことなしですが、不慮の事故や病気の場合もあれば、犯罪や自然災害など、日々の暮らしに突然降りかかる予見し得ない災いがあります。久しく水と安全はタダと言われたこの日本ですが、悲しいかな今や家庭でも「危機管理」を考える時代となってしまいました。そこで防災対策を見直す手始めに、我が身の被災経験と今までの防災研究から、まずこんな事を銘記して欲しいと思います。

日本は世界的な災害多発地帯、だからこそ防災対策はマナー

  私達の暮らす日本は、移ろいゆく四季の恵み豊かな国ですが、それらは厳しい自然の裏返し。大洋と大陸の境界、海流と季節風の通り道、大陸プレートの交点にあり、歴史を通じ幾多の自然災害を経験してきたのは皆さんもご存知のことでしょう。

 過剰に不安がる必要は全くありませんが、世界の中でも元々自然災害が生じやすい場所に暮らす現実を見直すと、もはや「防災対策は災害国日本に暮らすマナー」と考えた方がいいのかもしれません。

具体的に、日本はどれだけ災害と身近なのでしょう?
    世界の震源分布
  • たとえば癒しの源である温泉も元は火山の副産物ですが、日本は全世界のわずか400分の1の国土面積しかないにも関わらず、世界の約10分の1の活火山がある火山国(10.4%、内閣府発行「我が国の防災対策」)です。

  • また地震に至っては、世界で起きるマグニチュード6以上の地震のうち約5分の1(21%、同)を占めています。右上図にあるとおり、世界的な視点で見れば、国土全体が地震・火山地帯の真上に乗った国、それが日本の姿です。

  • 地震はインパクトがあっても、人生への被害まで受ける確率は比較的少ないもの。実は日本人が最も平均して被害を受けるのは水害で、過去10年間に全国の自治体のうち9割が水害を経験し、約450の市町村は慢性的に被害を繰り返している(国土交通省河川局調べ)のが現状です。
 中には、災害のない地方はないかと、血眼に探す方もおられます。極論を言うと海外に出るのが一番ですが、それでは何とも非現実的です。いっその事、日本に暮らす限りは自然災害と共生してゆくべきもので、だからこそ防災対策はマナーであり作法だと考えた方が、より現実的な対応なのかもしれません。



  

その場しのぎで終わらないために、マナーとしての防災意識を

近年の顕著な地震と、防災先進県静岡県民の防災意識  防災というと、官民揃って「災害は恐いから対策を」とか「○○しないと生き残れない!」など、不安や恐れで人を煽るばかり。一時的に対策熱が高まっても、それでは地に足の付いた危機管理意識は育ちません。結局は「喉元過ぎれば熱さ忘れる」のことわざ通り、その場しのぎで長続きせずに終わってしまいます。

 それを表しているのが右のグラフで、私の暮らす静岡県における防災意識の経年推移をまとめたものです。顕著な地震が続いた平成5年から7年までは右肩上がりで、店頭には防災用品が溢れんばかりの勢いでした。でも顕著な災害が2,3年減ると、防災先進県と呼ばれる当地でも防災意識は冷め、比例して店頭も寂しい限り。当時は防災グッズの買換えに難儀したものです。近年は災害頻発のため、以前のピーク時まで回復しますが、次の防災グッズ交換時期の3年から5年後、現在の防災意識が本物かどうか明らかになるでしょう。

 そうした現状を見るに付け、不安に引きつり肩肘張って取り組むのではなく、防災対策は日本に暮らすマナー、といった感覚で向き合う方が、長続きする防災意識のためには良いのではないのでしょうか。