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防災体験館 体験レポート

東南海地震津波の記憶と郷土史を伝える津波避難ビルの防災資料館 レポート
三重県 大紀町錦タワー 防災資料館 訪問'12/6/25
三重県大紀町錦タワー 防災資料館 内部

山々の深く濃い緑とリアス式海岸が続く三重県南部、熊野灘に面した漁港の街大紀町錦地区。1993年の北海道南西沖地震津波を契機に、高台避難に支障がある地域に作られたのが錦タワーです。地元の災害や歴史の資料館として、また集会所・消防団施設・公衆トイレなど、普段から馴染みの場所として使われる津波避難施設を作り、地域で活用する取り組みにより「第3回防災まちづくり大賞」を受賞。後に出来た第2錦タワーと並び、地域のランドマークとなっています。

大紀町錦タワーの概要、津波避難タワーとしての機能

1 リアス式海岸の漁師町、錦地区 2 住宅街にある錦タワー
大紀町錦漁港と背後の山々 住宅街の中の錦タワー
熊野灘に面し、有数の漁獲量を誇るリアス式海岸のわずかな平地に街が密集 高台避難に困難な日の出地区、通学路でもある生活道路沿いに錦タワーはあります

3 1階 消防団資機材庫と避難階段 4 1階 公衆トイレやベンチも
1階 消防団資機材庫と避難階段 1階 公衆トイレ
避難階段脇に消防団倉庫、これも災害時の集結場所というコンセプトに沿った機能 通学路側にはベンチが、公衆トイレは男女別で車椅子対応トイレも別途あり

5 建立碑に刻まれた目的と願い 6 こちらにも避難階段が
1階 錦タワー建立碑 1階 避難階段
遡上した津波が、地区を湾曲して囲む奥川から溢れ退路を塞いだ事から建設されました 緩やかな傾斜と曲線を描いた避難階段は、手摺り付きで登り口が三つあります

7 昭和東南海地震津波の浸水高 8 2階 日の出地区集会所
昭和東南海地震津波の浸水高標示 2階 日の出地区集会所
昭和19年の東南海地震での、この地域の津波浸水高(海抜6.5m)地点を標示 三方からの避難階段の合流点が2階集会所、この日は某議員の視察で使用中

9 4階 収容避難所 10 救助用資機材も備蓄
4階 避難所スペース 4階 避難所 救助用資機材
被災者の居住スペース、屋上にある発電機で各階の照明などの電力も確保 ロープや浮き輪・ライフジャケットなど救助用具も備蓄、壁には油断大敵の貼り紙も

11 避難階段を更に登る 12 5階 津波避難スペース
錦タワー 避難階段壁面 5階 津波避難スペース
タワー外壁の螺旋階段は、避難者保護のため壁が背丈以上あり、一定距離毎に小窓も 屋上は転落防止がされた東屋風避難スペース、各部屋への電力供給用発電機もあり

13 周囲を360度見渡せます 14 海方向の錦地区の街並
5階 避難スペースはパノラマビュースポット 屋上から見る錦地区海方向
床面で海抜20.2m、ベンチもあり錦の街並を360度見渡せるビュースポットにも 海まで直線距離で450m、わずか60〜200mを奥川が取り囲む中の住宅地

15 高台の上に大紀町役場錦支所 16 遠くに海抜30mの避難場所も
高台の大樹町役場錦支所 海抜30mの高台避難場所
急峻な高台に役場支所、図らずも同じリアス式海岸の宮城県女川町立病院と似た光景 高台に多数の避難場所を整備、高齢化の中どう避難するかが津波常襲地帯の生き方




  

大紀町錦タワー 防災資料館の展示内容

1 3階 防災資料館 入口 2 防災資料館 中はこんな感じ
3階 ;防災資料館入口 3階 防災資料館 内部
各階の施設とも、踊り場に入口があり、丈夫なステンレス製ドアを使用しています お洒落な照明の元、過去の地震津波や伊勢湾台風の被害と郷土の記憶を展示

3 錦タワーの構造と建設経緯 4 昭和東南海地震での錦地区の被害
錦タワーの構造と建設経緯 説明ディスプレイ 昭和東南海地震での錦地区の被害
平成10年(1998年)に完成した錦タワーの各階構造と海抜、建設経緯を紹介しています 昭和19年12月に起きた昭和東南海地震の様子を、史料と多数のパネル写真で展示

5 壊滅した漁港沿いの錦中心街 6 津波浸水の痕跡が残る被災時計
錦タワー 昭和東南海地震津波で浸水した痕跡が残る被災時計
錦地区だけで死者64名・全半壊712棟、戦時統制下で地震自体報道が殆ど無い状態 当時の錦町役場にあった時計、発災で針は止まり、浸水部分の文字盤が白く変色

7 錦地区の郷土史も展示 8 往時の民具や漁具も展示
錦地区の郷土史 昔の民具や漁具も展示
7世紀頃からの錦地区の変遷、明治から平成に至る姿をパネル写真・定点写真で紹介 蓄音機や燭台、また数々の生活道具から漁具など、昔の生活を偲ばせる品々も

9 錦地区での過去の津波高一覧 10 オリジナルのパンフレットもあり
過去の地震津波での伊勢湾・熊野灘の津波浸水深 錦タワー パンフレット
安政東海地震7m、昭和東南海地震6-7m、昭和南海地震1-2m、チリ地震津波3.5m 夕闇に浮かぶ錦タワーの夜景が表紙のパンフレットも常備、持ち帰ることができます


  
  

体験した印象

 津波避難タワー併設型という、珍しいタイプの防災資料館です。ご覧になってお判りの通り、ここは一般的な防災体験館・防災センターではなく、実際の津波常襲地帯における被災の実像を、後世、特に地元住民に伝える事を目的とした施設といえます。昭和34年の伊勢湾台風での被害も展示していますが、特に昭和19年の昭和東南海地震津波は、戦時統制下にあって実態が正確に報道されないまま歴史に埋もれてしまった為、非常に貴重な記録を常設公開している点で一見の価値があります。なお、似た性格の施設として、公益財団法人の運営する阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センターもありますが、こちらは地方の小さな自治体による運営という点で気概を感じるものがあります。

 また、津波避難タワーでありながら、地域のランドマークとしても十分価値のある、機能性とデザインの両立も、防災分野では非常に珍しい施設です。津波や漂流物による衝撃を受けにくい円筒形とし、また登り易さ・避難者保護から産まれた壁の高い螺旋階段が、巻き貝のような印象的な外観を生み出しています。

 更に、別のデザインとしてコミュニティデザインの観点が取り入れられているのも、防災分野では先端的ではないでしょうか。公衆トイレやベンチ、消防団倉庫、集会所、また今回紹介した地元の災害・歴史資料館を併設させ、普段からタワーに人々を触れさせるアイデアが素晴らしいです。津波避難タワーに限らず多くの防災施設は、自主防災関係者以外にとっては縁遠い物で、防災訓練以外になかなか触れる機会はありません。しかし、本施設の様に馴染みの場所にさせる仕組みを設けるなら、行動により結び付く事でしょう。

 本津波避難タワーは、昭和東南海地震レベルの津波なら浸水しない2階(海抜8.2m)より上を避難スペースとしてきました。しかし、日本海溝での連動型巨大地震つまり東日本大震災の発生を受け、中央防災会議により、太平洋側の東海・東南海・南海・日向灘地震連動型の南海トラフ巨大地震の被害想定が行われた結果、錦地区では最大16mの津波想定となりました。その場合、5階は大丈夫なものの、2,3階は水没の恐れがある為、更に大型(7階建て・屋上床面で海抜23.8m・500人収容可能)の、第2錦タワーが平成24年に建てられました。今、錦地区では2つの避難タワーがもしもに備えています。

  
  

大紀町錦タワー 防災資料館の施設情報

 
所在地: 三重県度会郡大紀町錦354-1
URL: http://www.kankotaiki.jp/others/nishiki-tower.html
TEL: 0598-73-3318
開館時間: 8:30-17:00
入館料: 無料
休館日: 土曜・日曜・祝日・年末年始
交通アクセス: JR紀勢本線紀伊長島駅より三重交通バス錦福羅公園行き約20分「船付」下車、徒歩約5分
駐車場: タワー基部に2台分程度

映像シアター 消火体験 土砂災害
119番体験 煙避難体験 火山
地震体験 水害 あり 応急手当
津波 あり 台風体験 耐震補強
ガイドツアー なし(自由見学)、休館日の見学は事前連絡を