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防災イベント体験レポート

都心から丘陵地帯を越えて、ベッドタウンに戻る想定での帰宅困難者体験   レポート
渋谷−相模原間 帰宅困難者 33km徒歩帰宅体験   体験'06/06/04

 日中に出先で被災したら、その日のうちに帰宅できない「帰宅困難者」。その数、南関東1都3県で650万人、東京23区だけで350万人と試算 (政府 首都直下地震対策専門調査会) されています。そこで今回は、都心の通勤通学また遊びや買い物先で被災して、丘陵地帯のベッドタウンへ帰るルートを想定して、渋谷を起点とした、渋谷−相模原間徒歩帰宅体験レポートを紹介します。

今回の徒歩帰宅体験ルートの概要

今回の徒歩避難体験ルート
 今回は上図の通り、都心平野部から多摩川を渡った後、相模原台地まで多摩丘陵を横断するルートとなります。主に歩く、国道246号線(玉川通り)と、東京都道・神奈川県道3号線世田谷町田線(世田谷通り・津久井道・鶴川街道)は、山手線・中央線に次ぐ、首都圏第3位の利用者がある小田急線と、首都圏私鉄第3位の利用者がある東急田園都市線 (共に、国交省H17年大都市交通センサスより) の沿線であるため、大規模災害で都心の公共交通が打撃を受けると、多数の徒歩帰宅者が予想される地域でもあります。

参考情報
今回のルートは、昭文社発行の「震災時帰宅支援マップ 神奈川・城南方面版」
96,106-110ページの内容に準拠しています。最新版の「震災時帰宅支援マップ 首都圏版」はこちら

     
     

渋谷−相模原 徒歩帰宅体験: 渋谷−三軒茶屋 3.4.km

1 10:00 渋谷駅ハチ公口より出発 2 今回は歩きやすい装備で体験
渋谷駅ハチ公前 ウォーキングと同様のスタイル
スタートはハチ公前広場でおなじみ、渋谷駅西口。渋谷界隈で被災し、実家のある相模原市南部まで徒歩帰宅する想定です。 スーツに革靴姿で歩き通した東京−横浜間徒歩帰宅横浜−平塚間徒歩帰宅との比較のため、今回はスポーツウェアにランニングシューズで。

3 10:14 R246道玄坂上交差点 4 10:28 山手通りと交差
道玄坂界隈を登る 玉川通り大橋付近 山手通りと交差
三軒茶屋までは、首都高3号線を見上げつつ下道の玉川通りを進む。高さ41階建てのセルリアンタワー前を過ぎ、道玄坂界隈の坂を登る。 旧山手通りから目黒川へ向け下り坂。緩やかな下り坂を進む。眼下に山手通りと街並が見える。

5 屋根とベンチのあるバス停 6 沿道は頭上空間が狭い
東急バスのバス停 玉川通りは緊急輸送路となります
池尻大橋で目黒川を渡ると、緩やかな上り道沿道のバス停は、屋根と格納型のベンチあり。 ビルに加え、首都高の待避所で高架が張り出す部分では圧迫感が。大規模地震後の玉川通りは危険が多そうだ。

7 三軒茶屋中心街に近付く 8 R246 8キロポスト
世田谷通りとの分岐案内 R246起点から8キロ地点
渋谷からは坂が多いためか、一般的な歩行速度の時速4kmを割り込みました。 R246起点の三宅坂より8km、日本橋より11.2km地点。トイレ休憩のため目の前のコンビニへ。

9 コンビニは支援拠点のはずが… 10 11:05 R246三軒茶屋交差点
店頭の災害時帰宅支援ステーション ステッカー 三軒茶屋交差点 R246・世田谷通り標識
災害時帰宅支援ステーションとしての店の対応をオーナーに聞くも「よく知らない上に無理」との返事。トイレ休憩込みで5分滞在し出発。 渋谷駅からの3.4kmを休憩別で60分で歩いた。東急田園都市線沿線へは引き続きR246を直進。小田急線沿線へは世田谷通りへ分かれます。


     
     

渋谷−相模原 徒歩帰宅体験: 三軒茶屋−多摩川 10.2km

1 三軒茶屋アーケード街を行く 2 11:19 環状7号線と交差
世田谷通り アーケード街 世田谷通り 若林交差点
世田谷通り三軒茶屋界隈は、古めのアーケード街。足裏や土踏まずが少し痛み始める。 環7通りはアンダーパスで交差。この先、緩い上り下りがしばらく続く。徐々に住宅街に変わる。

3 11:39 世田谷3丁目交差点 4 休憩にも使える世田谷公衆トイレ
世田谷3丁目交差点 船をモチーフにした世田谷公衆トイレ
分岐となるが世田谷通りは左側へ。ここで東急世田谷線沿線からは離脱。この先の桜小は、地元用避難所だが医療救護所も開設予定。 桜小前交差点の先に、2階建ての広々とした明るいトイレが。1階は車椅子対応なうえ、ベンチ・水場・公衆電話もあり休憩場所としても良好。

5 12:09 東京農業大学前 6 並木下の休憩スペース
東京農業大学正門前 馬事公苑入口
しばらく進むと、沿道に東京農業大学の正門が。一帯は災害時に広域避難所となります。 更に100m先の反対側には、木陰にベンチもある広々とした並木道が。進んだ奥には…

7 12:13 馬事公苑に到着 8 ここで45分ほど昼食休憩
馬事公苑入口 ケーキの缶詰
「花と緑と馬のいる公園」は広大で、トイレ・自販機多し。世田谷通り反対側の東京農大と併せて、一帯が災害時の広域避難場所です。 パンの缶詰より小振りで、1缶で400kcal近くあるチョコレートケーキの缶詰その他でお昼ごはん。馬事公苑にはベンチがたくさんあります。

9 衝撃吸収インソールと交換 10 交換の際にはカットしてから
SORBOパワーライトインソールと交換 あらかじめカットして防災用品に入れても
靴標準のインソールから、スポーツ用の衝撃吸収インソールに代えて、疲労具合をテスト。 市販品は大きさが数タイプありますが、靴の大きさに合わせ更に要カット。13:00に出発します。

11 13:19 環状8号線と交差 12 仙川に向け急坂を下る
環8三本杉陸橋 日大商学部付近
休憩を終えて再開。環8通りをくぐると、NHK放送技研や災害拠点病院の国立成育医療センター。 日大商学部前のY字路は左進。間違えないよう注意。急で長い坂を下って仙川を渡る。

13 13:45 砧小交差点 14 14:10 狛江市に入る
砧小交差点 世田谷区・狛江市境
仙川を渡ると砧小交差点。北進すると成城学園前駅方面に出ます。この辺で渋谷から10km。 野川に掛かる中之橋で小田急線が見える。長かった世田谷区を抜け、狛江市に入ります。

15 14:33 小田急和泉多摩川駅 16 14:41 多摩川水道橋に到着
和泉多摩川駅 多摩川水道橋
世田谷通りは駅脇を通る。多摩川鉄橋がリスク要因ですが、ぜひ運行状況を確かめましょう。 渋谷駅から13.6kmを4時間41分で踏破。河川敷の他に、橋のたもとに東屋とベンチあり。仮設トイレは神奈川県側です。ここで休憩とします。



     

渋谷−相模原 徒歩帰宅体験: 多摩川−相模大野 19.4km

1 15:25 休憩を終え出発 2 いよいよ神奈川県に入る
多摩川水道橋 東京都・神奈川県境
食糧を少し食べ、ベンチで昼寝して44分休憩。足は確かに痛むが、革靴で歩いた以前の徒歩帰宅体験よりだいぶマシ。靴擦れ等は皆無。 川崎市多摩区に入る。渡って南側に、小田急・JR南武線に加えバス路線も多い登戸駅。渡った後、歩道が切れて路側帯のみ区間となる。

3 世田谷街道から津久井道に 4 15:47 多摩警察署前交差点
津久井道標識 多摩区役所・警察前を通過
南武線を渡ると、高架も終わって歩道も復活。多摩区役所や登戸郵便局の前を過ぎる。 府中街道(川崎街道)との交差点。南側へ曲がると向ヶ丘遊園駅に出る。

5 16:03 東生田小前 6 16:34 読売ランド前駅
東生田小・東生田歩道橋前 読売ランド前駅
小学校は地元用避難所だが、幹線沿いだと徒歩帰宅者が来る可能性大。町田まで15km。 この辺から町田まで、道は丘陵地帯の谷間を小田急線と共に進む。坂はあっても緩やか。

7 川崎市麻生区に入る 8 麻生警察署前、町田まで10km
川崎市麻生区境標識 1974年の多摩線開業前は、小田急線は沿道を走っていました
多摩区から麻生区に入る。古くからの谷あいの街道のため、車道・歩道共に広くはない。 小田急線は少しの間、街道を離れる。新百合ヶ丘駅へは南側へ高台を少し登ると行けます。

9 17:27 小田急多摩線高架 10 柿生駅北口を通過
多摩線高架をくぐる 世田谷町田線 柿生駅前歩道橋
左右に高台が迫る谷あいを進む。疲れつつも順調に進む足も、この辺から痛みが気になる。 再び小田急小田原線沿線に戻る。雲行きが怪しくなり、時折にわか雨も混じるように。

11 17:53 東京都町田市に入る 12 18:24 金井入口交差点
町田市境 鶴川街道 金井入口交差点
町田市に入り、再び東京都に。雲行きは悪く、にわか雨を気にするうち鶴川駅前を通過。 道は津久井道から鶴川街道に名を変える。鶴川駅前から700mほど、久々の分岐点は左折する。

13 鶴川街道に沿って歩くこと 14 19:22 菅原神社前交差点
鶴川街道標識 菅原神社前交差点
金井交差点を直進で多摩市方面に。町田方面は左折が正解。緩やかに上りながら、丘陵地帯の住宅地を進む。日没が近く、徐々に暗くなる。 約1時間で丘陵住宅街を抜ける。ランドマークが乏しく先が見えない状況は、心身共に疲れ、途中写真を撮り忘れる。町田市街へは左折。

15 19:28 鎌倉街道と分岐 16 鶴川街道の路地を町田市街へ
鶴川街道 鎌倉街道分岐 鶴川街道で出場中の消防車とすれ違う
Y字交差点は細い方が町田駅方面への鶴川街道。足の張りが、いよいよきつくなり始める。 ペースをかなり落とし、ゆっくり目に歩く。旧街道の細い路地を町田駅方面に進む。

17 19:53 小田急町田駅到着 18 20:04 境川を渡り相模原市に
小田急町田駅 境川から相模原台地への急な登り坂
町田市役所を経て町田駅に到着。小田急に加えJR横浜線・バスターミナルもあり、大抵はここで終わりにして良いだろう。トイレ休憩を5分取る。 細い路地で近道し、境川を渡って相模原市へ。足裏はじめ常時痛む状態で時速2km台に低下。最後の難関は、相模原台地への急な登り坂。

19 20:36 R16号谷口陸橋 20 20:43 相模大野駅でゴール
R16号線谷口陸橋下交差点 相模大野駅ビル
急坂を登り切りると、そろそろ足にも限界が。気力で歩くうち国道16号と交差。ゴールは近い。 33.1kmを10時間43分で踏破!かつて住んでいたこの界隈も、都心から歩くと結構だと実感。


     

東京−横浜間 30km徒歩帰宅体験のデータ・感想

天気 曇一時晴れ
時々にわか雨
最高気温 24.2度 最低気温 16.4度
総距離 33.1km 総時間 10時間43分 総平均時速 3.09km/H
休憩回数 6回 休憩別時間 8時間48分 平均時速 3.53km/H
水消費 500ml×4 食消費 2食分 トイレ回数 4回
沿道周辺
支援施設
公共の災害時帰宅困難者支援施設
[渋谷区]   第一商業高校(旧山手通り)
[目黒区]   芸術高校(池尻大橋)、駒場高校(池尻大橋)
[世田谷区]
青鳥養護学校(池尻、世田谷公園そば)、世田谷郵便局赤十字エイドステーション(三軒茶屋)、馬事公苑・東京農大一帯、砧公園(広域避難場所のみ)、狛江高校(和泉多摩川駅そば)
詳細は 「世田谷区災害時帰宅支援ルートマップ」 を参照
[狛江市]
市内各駅周辺のオープンスペースで帰宅情報を提供
状況により、エコルマホール(狛江)、各駅最寄の地域・地区センターを開放
[川崎市]
現状では、帰宅困難者向けの支援は下記民間企業との協定のみ
[町田市]
地域防災計画では、「必要に応じ駅周辺の公共施設を休憩場所として開放する」「主要道路に赤十字エイドステーションを設置する」と規定
[相模原市]
現状ではなし。なお東海地震警戒宣言発令時には、相武台前駅で、次いで相模大野駅で、小田原方面の電車運行が打ち切られます。

民間の災害時帰宅支援ステーション 
[コンビニエンスストア]
am/pm、ココストア、コミュニティ・ストア、サークルK、サンクス、スリーエフ、セブンイレブン、デイリーヤマザキ(ヤマザキデイリーストア 含む)、ファミリーマート、ポプラ(生活彩家 含む)、ミニストップ、ローソン
[ファミリーレストラン、ファストフード]
デニーズ、モスバーガー、山田うどん、吉野屋、ロイヤルホスト
・公公婆婆、シズラーは沿道にないため除外
[その他]
八都県市内石油商業組合に加盟するガソリンスタンド
神奈川県内の日産自動車各事業所・販売店

(本記事を書いている2009年時点の情報)
感  想 経路について
 谷底の渋谷から山手通りへ上り、目黒川へ下ってまた上る。起伏に富んだ三軒茶屋までの区間が一番目まぐるしい感じ。世田谷界隈は起伏が少なく、多摩川近くで下り坂がある程度。後半は丘陵地帯を通過するものの、谷あいを河川に沿って緩やかに上るため、全般的にはそれほど厳しい環境ではなさそうです。
 ただ、後半の多摩丘陵では道の狭い区間が多く、大勢の徒歩帰宅者が押し寄せた際は、捌ききれず溢れて危険かもしれません。

休憩・帰宅支援の受け易さについて
 執筆時点に於いては、帰宅困難者・外出者用への公的支援施設は、三軒茶屋以降あまり期待できないと考えた方が良いかもしれません。三軒茶屋−和泉多摩川間の世田谷街道は、都の徒歩帰宅者(外出者)支援道路に入っておらず、多摩川以西でも自治体の徒歩帰宅者支援が、まだ大して整備されていないためです。あとは、民間の災害時帰宅支援ステーションが、どれだけ実際に稼働できるかによるでしょう。
 現状では、食糧・給水・医療といった手厚い支援を提供できる場所は限られています。もっとも、広域避難場所・大規模公園・河川敷など、休憩や一時滞留に使える所は、東京都内においては比較的多いため、多摩川以西に備えて前半のうちに利用しておくのが現実的でしょう。

総評
 コース自体の疲労度はあまり高い方ではありませんが、多摩川以西まで徒歩移動が必要な方は、余裕のある備えをしておく必要があると言えるでしょう。通勤通学者以外の外出者は、多摩川を渡る前に帰宅者支援を受ける事を心掛けると良いでしょう。
 ちなみに、ほぼ同距離を歩いた東京−横浜間徒歩帰宅体験と比べると、コースそのものはこちらの方が起伏が多く疲労度は高いでしょう。しかし、スーツに革靴姿で歩いたのに対すると、トレーニングウェアにランニングシューズ姿で歩いたためか、3/5程度の疲労度で済んでいます。しかも、足に限界を感じるまでの距離もかなり伸びているので、装備の違いは、皆さんのご想像以上に大きい事を強調しておきたいと思います。

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