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防災イベント体験レポート

都心官庁街で被災し、京浜沿岸の主要道路にて横浜へ帰る想定での体験   レポート
東京−横浜間 帰宅困難者 33km徒歩帰宅体験   体験'06/04/28

 日中に出先で被災したら、その日のうちに帰宅できない「帰宅困難者」。その数、南関東1都3県で650万人、東京23区だけで350万人と試算 (政府 首都直下地震対策専門調査会) されています。過去の関東大震災では、京浜エリアのみならず相模湾岸一帯で交通網が麻痺しただけに、最悪は、京浜間を歩いて帰らざるを得ないケースもあり得ます。帰宅ルートの概要を把握する一助に、東京−横浜間徒歩帰宅体験レポートを紹介します。

今回の徒歩帰宅体験ルートの概要

今回の徒歩避難体験ルート
 神奈川県から東京23区へ毎日約87万人、京浜東北線品川−大井町間だけでも32万人/日 (国交省H17年大都市交通センサス) の人々が、日々鉄道移動する今回のルート。
 全体的には平坦で、大きな川を越える際にアップダウンがある程度です。しかし、日本橋−横浜間の全行程とも言える国道15号(第一京浜)沿道は、人口・高層建築密集地、かつ臨海埋め立て地帯であるため、様々に危険度の高い一帯といえます。今回は、都心への通勤者を模して、長距離徒歩には不向きなスーツに革靴姿で行いました。

参考情報
今回のルートは、昭文社発行の「震災時帰宅支援マップ 神奈川・城南方面版」
62-67ページの内容に準拠しています。最新版の「震災時帰宅支援マップ 首都圏版」はこちら

     
     

プロローグ:霞ヶ関−東京駅−日本橋間 3.2km

1 12:00 霞ヶ関駅からスタート 2 今回の服装と持参物です
スタート地点 メトロ霞ヶ関駅A1出口 服装と持ち物 翌日も徒歩避難体験を始める前に横浜駅東口で撮影
都心で広域災害に遭遇した想定で、東京メトロ霞ヶ関駅A1出口をスタート地点としました。 スーツに革靴で歩く。バッグに入れた市販の帰宅困難者用防災セットは、日本橋から使用します。

3 12:05 日比谷公園に避難 4 給水や食糧などの支援あり
日比谷公園 災害備蓄拠点 都の震災対策用応急給水施設
最寄りの広域避難場所、また千代田区の帰宅困難者用倉庫がある、日比谷公園に向かいます。 災害時、日比谷公園では帰宅困難者向けに給水や支援物資の提供が受けられます。

5 12:35 徒歩避難を再開します 6 皇居を望みお堀沿いに歩く
革靴で避難します 皇居外苑
30分で支援物資を受け取った想定で、次は東京駅へ。今回はスーツに革靴で徒歩避難します。 歴史あるビルが多いこの一帯。落下物を避けるため、歩道も広い皇居お堀側を歩きましょう。

7 12:58 東京駅丸ノ内口 8 13:13 日本橋到着
東京駅丸ノ内口 日本橋 本物の道路元標は橋のど真ん中
公共交通機関で帰ろうとするも、全て不通なため、徒歩帰宅に切り替える想定とします。 霞ヶ関−日本橋は3.2km・実質43分。軽く足慣らし程度ですが、あくまで平時の話。災害時は大混乱で時間も更に体力も要するでしょう。

9 日本橋は日本道路網の起点  
左は主要都市への里程標 右は道路元標の模型  
流れ上、東京駅から避難開始が自然ですが、江戸五街道の起点で道路元標もある日本橋を、今回のR15経由徒歩帰宅の起点とします。  



     

東京−横浜 徒歩帰宅体験: 日本橋−多摩川 18.1km

1 13:30 日本橋より徒歩帰宅開始 2 銀座の百貨店街を抜ける
日本橋から200m 国道1号との分岐付近 銀座の百貨店街
日本橋からすぐ国道1号が分岐。霞ヶ関や東京タワーを経て、国道15号の内陸側を並行します。 八重洲通り、首都高八重洲線高架を過ぎると銀座界隈。裏通りも含め周囲はビルばかり。

3 14:01 新橋・汐留界隈 4 14:38 田町で日本橋より5km
新橋駅付近 田町 札の辻交差点
銀座8丁目交差点で首都高をくぐると、すぐ新橋駅周辺。新交通ゆりかもめやJR各線のガードなど、高架橋が多い一帯。 田町駅を過ぎ、三田・東京タワー方面と合流する札の辻交差点は、歩道橋を渡る必要あり。

5 14:54 横浜まで25kmの表示 6 15:12・7.4km 品川駅前
高輪 泉岳寺付近 品川駅前
高輪泉岳寺付近の歩道橋で、横浜までの距離案内出現。日本橋より1時間20分・時速4.5kmペースでも、災害時はこうはいきません。 左手に線路が迫ると程なく品川駅。気分的に一区切りで5分休憩。これより山手線圏を脱出。

7 15:20 複雑な新八ツ山橋分岐 8 横浜までの最狭歩道区間
R15は意外にも写真右側、オーバーパスして左に抜ける立体交差
複雑で災害時危険な立体交差より、更に左の旧東海道から、東品川駅経由でR15に戻る方が確実。これより京急本線沿いに進みます。 下町風情の沿道が続くが、自動販売機や老朽ブロック塀も多く、大規模地震後は歩く妨げに。

9 15:51 日本橋より10km地点 10 日本橋より3時間で大森海岸
10kmポスト
左手に迫る京急高架と並進し、10km地点は京急鮫洲駅前。足が痛くなり始めたので5分休む。持参した500ml飲料水1本目はここで空に。 歩道は広いが、京急や首都高の高架が迫り、沿道は高層マンション多し。左手裏は平和島運河。

11 16:47 大森警察署前R131分岐 12 17:18・15.5km 京急蒲田駅
大森警察署前交差点 横浜方面は右へ 京急蒲田(空)第1踏切 高架化工事中
環7を過ぎると、平和島駅前から立体交差の下道を進む。徐々に足の裏が痛み始める。底が固い革靴は、長時間徒歩には実に不便。 足が明確に痛くて辛い。京急空港線はじめとした高架化工事は、2014年度完成予定で進行中。

13 R15沿道の帰宅支援施設 14 18:06 多摩川六郷橋緑地に着く
雑色駅前 都立六郷工科高校 多摩川に到着
六郷工科高校城南特別支援学校は、都の帰宅支援ステーションで、唯一国道15号沿道の学校。疲れた足では近い場所ほど助かります。 休憩等込で、日本橋より18.1km・4時間36分、霞ヶ関から21.3km・6時間6分にして東京脱出。

15 緑地には公衆トイレあり 16 左右の足マメを応急手当
緑地コートの公衆トイレ 靴ずれ保護パッドで足マメ保護
簡易水洗の仮設トイレは比較的綺麗。ただし緑地全体が広域避難所であるため、大規模災害時は混雑必至。大は男女各1、小は1器。 革靴での長時間歩行は思った以上に辛く、左右の足にマメが。靴ずれ保護パッドを持参して正解でした。が、この後更に過酷な事態に・・・

17 軽食も摂りつつ30分休憩  
パンの缶詰 Q急ベーカリー 3年保存可能  
緑地公園は広大でベンチも多し。空腹感は少ないが、パンの缶詰(100gで339kcal)でエネルギー補給。2本目の水はここで飲みきりました。  


     
     

東京−横浜 徒歩帰宅体験: 多摩川−横浜駅東口 11.7km

1 18:35 六郷橋で多摩川を渡る 2 18.7km 神奈川県川崎市に入る
多摩川六郷橋 神奈川県境 案内標識
約30分で休憩を終え、多摩川を渡って東京都大田区を後にする。横浜駅まで先はまだ長い。 川崎市に入ると急に高層建物が増える。休憩で歩行速度は回復したが、足の痛みは残る。

3 18:51 川崎区役所前 4 19:02 日本橋より20km地点
川崎区役所交差点 日本橋より20km地点標識
広々とした歩道で、建物から落下物が直接当たる心配は少ないが、高層建物ばかりなので要注意。交差点右折でJR・京急川崎駅。 川崎区元木1丁目交差点付近。徒歩距離20km以上が、国が定義する帰宅困難者の目安だが、実際は混乱や混雑で更に短いだろう。

5 19:18・21.1km いよいよ横浜市 6 19:30 鶴見川を渡る
横浜市境看板 鶴見川に掛かる鶴見橋を渡る
京急鶴見市場駅付近で横浜市鶴見区に。気力的に、市境表示のカメラ写りすら確認できず。 いわゆる都市河川で休憩可能な場所なし。頭上に送電線、橋の脇に送電鉄塔あり。鶴見橋以外にも近隣に迂回できる橋は多い。

7 19:41 鶴見区役所前 8 20:17 日本橋より25km地点
 生麦1丁目交差点 キリンビール工場・生麦事件の碑の目の前
足の痛みに限界の文字がチラつき始める。靴擦れに加え、着地するたび足の裏に苦痛が走る。 キリン横浜工場と生麦事件碑の脇が25km地点。この先埋立工場地帯。痛みが酷く10分休憩。

9 21:18・27.8km 東神奈川付近 10 21:41・29.0km 栄町交差点
神奈川二交差点 海側から首都高が頭上に割って入る 三叉路を真っ直ぐ行くとMM21地区、右斜め前で横浜駅近道、右折でR15終点
首都高の下を歩く。信号待ち等で一度止まると一歩目が非常に痛い。足の上下動を抑え、なるべく止まらずヘロヘロと歩を進める。 足の裏は痛く、ふくらはぎは張り、歩を進めるのが精一杯。段差で躓き、もはや気力のみで歩く。横浜駅へは斜め右が近道だが右折する。

11 21:46 R15終点青木通交差点 12 21:58 遂に横浜駅東口前ゴール
共に日本橋を源とする国道1号と15号 1号は当初、今の15号であった 横浜駅東口でないのは次の日も続きを歩くため
たった200mを5分も掛け歩く。日本橋から29.2kmで国道15号は終わり、ここから先は国道1号。 駅東口脇の新田間川に掛かる金港橋でゴール。日本橋より29.8km・8時間28分、霞ヶ関から33.0km・9時間58分の道のりでした。


     

東京−横浜間 33km徒歩帰宅体験のデータ・感想

天気 晴れ 最高気温 20.9度 最低気温 10.9度
総距離 33.0km 総時間 9時間58分 総平均時速 3.31km/H
休憩回数 6回 休憩別時間 8時間23分 平均時速 3.94km/H
水消費 500ml×3 食消費 1食分 トイレ回数 3回
沿道周辺
支援施設
公共の災害時帰宅困難者支援施設
[東京都]
芝商業高校(浜松町)、八潮高校(青物横丁)、工業高専(鮫洲)、六郷工科高校(雑色)、城南特別支援学校(雑色)、
・日本橋高校、晴海総合高校、港特別支援学校は、沿道から遠い
・品川ろう学校は城南特別支援学校に統合
・沿道に近い三田高校は、国道1号の避難者担当校
[川崎市]
・現状では、帰宅困難者向けの支援は下記民間企業との協定のみ
[横浜市]
沢渡中央公園(横浜西口)、岡野公園(平沼橋)
・横浜アリーナ、横浜国際平和会議場、横浜公園は沿道から遠い
また「必要に応じ、主要駅等に一時宿泊場所を開設」と規定

民間の災害時帰宅支援ステーション 
[コンビニエンスストア]
am/pm、ココストア、コミュニティ・ストア、サークルK、サンクス、スリーエフ、セブンイレブン、デイリーヤマザキ(ヤマザキデイリーストア 含む)、ファミリーマート、ポプラ(生活彩家 含む)、ミニストップ、ローソン
[ファミリーレストラン、ファストフード]
デニーズ、モスバーガー、山田うどん、吉野屋、ロイヤルホスト
・公公婆婆、シズラーは沿道より遠い
[その他]
八都県市内石油商業組合に加盟するガソリンスタンド
神奈川県内の日産自動車各事業所・販売店

(本記事を書いている2009年1月時点の情報)
感  想 経路・沿道について
 地形的には、東京−横浜間の全編にわたって、ほぼ平地。アップダウンを意識するのは、せいぜい大河川の堤防に伴う傾斜がある程度です。歩道も、ごく一部以外は広いため、道自体は非常に歩きやすい部類に入るでしょう。
 しかし、沿道は高層建築物が非常に多く、落下物等の危険を避けるため裏通りなどへ迂回した方が良さそうな箇所も多くあります。また今回のコースは、海まで数百メートル以内の臨海埋め立て地帯がメインのため、液状化現象といった不安要素も加わります。運河が多い内湾であるとはいえ、津波の危険性も否定できません。

休憩・帰宅支援の受け易さについて
 今回の沿道には、休憩に適した公園・広場類がほとんどなく、休憩場所の確保に苦労しそうです。特にトイレは、災害時帰宅支援ステーション登録施設はじめ民間施設が中心になりますが、ライフライン停止時でも確実に利用可能か疑問です。
 公的な支援施設は上記の通り、多くが沿道から少々距離があり、体の状態によっては利用が躊躇われます。反面、京急雑色駅そばの六郷工科高校・城南特別支援学校は、数少ない沿道沿いの支援施設のため混雑必至でしょう。なお広域避難所等は、運河を隔てた人工島にあったり、沿道から遠いなど、大規模地震後のアクセスには不安があります。

総評
 地形的には比較的楽なルートですが、大都市中心部ゆえのデメリットもあるため、このルートを利用する通勤通学者は、携帯トイレはじめ基本装備をしっかり用意する必要があるでしょう。
 とはいえ、このルートの最大の困難は、想定利用者の膨大さ。発災後、一斉に群衆がなだれ込むと、非常に危険な利用者密度となるため、時差出勤ならぬ「時差避難」が必要でしょう。すぐに帰宅しようとせず、周囲の救出救護や、職場・学校の復旧作業を手伝うなど、「共助」に協力しつつ、状況を判断してから帰宅を始める方が良いかもしれません。

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