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非常持出・備蓄の準備

被災生活は着たきり生活、片付け・復旧などなど予想以上に汚れる毎日   提言
防災グッズに、高機能素材のジャージや衣類を1セット   改訂'07/1/10

  多くの自治体では、非常持出品・備蓄品として、左図の様に衣類を挙げています。しかし、下着・靴下などのインナー類が大半で、上着などいわゆるアウター類について指摘のあるものは、かなり少数派です。

 対する一般市民である私達は、実際にどれくらい、衣料品を防災用品として備蓄しているでしょうか。例として、下記のようなデータがあります。

一般家庭における衣料品の防災備蓄率
自治体 衣料品準備率 備 考
和歌山県 8.0% 地震に関する県民意識調査結果(H16年4月)
岐阜県 9.6% H17年 地震等防災意識調査
静岡県 32.3% 東海地震についての県民意識調査 H17年度
平成11年度の37%より、回を追う毎に下がり続けています
市民防災ラボ調べ、地域防災計画や統計資料など公表資料から集計

 自治体・一般市民ともに、防災用品といえば非常食や飲料水が真っ先に挙がる傾向は、近年でも似たり寄ったり。しかしより実際的な備えのために、防災用品に高機能素材のジャージや衣類を1セット入れておいてはいかがかと、提言させて頂きます。

     

衣類はなぜ必要?−着たきり被災生活は予想以上に汚れる毎日だから

  被災生活というと、ニュースなどでよく見かける、避難所で身を寄せ合ってじっと状況を耐える被災者の姿をイメージされる方も多いでしょう。しかし被災生活では、衣類に関して以下の事情に直面します。

初期の数日は着たきり生活
 これは容易にご想像が付くことでしょう。地震に限らず大規模災害では、以下をはじめとした状況の故に、初期の数日は着たきり生活になりがちです。
  • 家屋の損壊・散乱で、物理的にモノが取り出せなくなります
  • 家屋が歪むと、押し入れ・クローゼットは開かない事も多くなります
  • 水害・土砂災害での浸水・汚損だと、物理的・衛生的に使い物になりません
  • 大規模地震後は頻発する余震で、家財は無事でも建物へ入るのを恐れます
  • しかも元々着ていた衣服は、被災時に汚損している場合もあります
被災生活は多忙で汚れる日々
 避難所でじっとうずくまるだけの被災者イメージとは異なり、被災後の毎日は非常に忙しく、かつ何かと汚れる日々の連続です。提言「非常食は今や味で選べる時代、でもカロリーは考えて」でも使用した図をここでも用いると、以下のような日々に直面します。

救出救護・避難 救出・救護はじめ発災時対応、避難・安全確保で心身を酷使 被災生活 不便な環境での生活物資調達、地域や避難所運営での当番も 生活再建 被害復旧に伴う各種の重作業、公的支援・保険関係の諸手続で奔走

 被災当初は命があっただけで、もう十分です。とはいえ、毎日のように入浴・着替えをする現代日本人にとって、ライフライン途絶環境で、普段以上に汚れる生活が何日も続くと、掛かるストレスはなかなかのものです。

 確かに、衣類の有無で死ぬようなことはありません。しかし、普段と違う被災生活独自の事情ゆえに、衣類の備えはあった方が良いように経験上実感します。

     

上着・アウターとして、ジャージ上下セットは何かと便利

 被災生活に最適な数々の特長
 ジャージ素材のトレーニングウェアは、スポーツをする人のみならず、今や様々な人、様々な場面で愛用されています。その数々の特長は、下記に挙げる通りですが、被災生活にも最適な万能ウェアとしてもおすすめです。まさに、寝て良し・動いて良し・使い回しが効き・手が掛かりません。
  • 圧迫の少ない伸縮性と快適な着心地
  • 様々な作業に向いた運動性と機能性
  • 寝間着にも外出にも見苦しくないファッション性
  • 上下セットで3シーズンは着回せる汎用性
  • 濡れても洗っても綿製品より速く乾く速乾性
  • 非常持出袋や備蓄品に入れてもしわになりにくい柔軟性
 スポーツ用品・量販店のみならず、安いものなら近所のホームセンターでも買えるようになっている、このジャージ上下セット。着たきりで多忙な被災生活でも、1着あれば便利です。自治体がすすめる下着・靴下類に加えて、非常持出袋または備蓄品(二次持出品)に入れておいても良いかもしれません。

     

着たきり生活のインナー類には、吸湿発汗性の高い高機能素材が快適

 快適な綿製品も、被災生活ではデメリットあり
 綿製品は、その肌触りの柔らかさ・着心地の良さ、加えて価格の安さでも、衣料品の定番素材です。しかし、着たきりになりやすい被災生活では、綿の特性が却ってデメリットになり得ます。保水性が高いため、衣類に含んだ湿気がなかなか発散されず、着たきりでは不快感を招きます。

  • 寒い季節、清潔で乾燥した繊維に含まれた空気層は、断熱効果を生み保温に役立ちます。しかし、湿気を含んだままの衣類は冷えや不快感の元になり、体調維持にはデメリットです。一度着た肌着を、再度着た際の冷たさもこれが原因です。

  • 暑い季節は、体から吸収した汗を素早く蒸散することで、余分な体熱を発散します。しかし、汗で濡れたままの衣類は熱交換を阻害し、不快感に加え熱中症の元にもなります。(この点は私自身、応急手当講習で夏場の熱中症予防に関して教えています)
      吸湿発汗性の高い高機能素材
 綿100%の衣類は、やはり天然素材だけあって、安静時には化繊以上に快適です。とはいえ、保水性の高く長期間着ていられないため、日々洗濯や着替えができる平時の環境があってこそ、快適に着ていられる素材ともいえます。そのため、動き回る被災生活のためのインナー類には、綿100%より化繊系の高機能繊維の方がより実用的でしょう。汗をかいて生地が体に貼り付いたり、布地に湿気がいつまでも溜まり冷えを呼ぶことでも、不快を感じる時間が短縮できます。また、着たきり生活でもより長く着続けることもできます。

 最近では、スポーツ・アウトドア用品を扱う量販店・ホームセンターなどでも、高機能素材品を買えるようになりました。吸汗速乾素材は通年使え、中には吸湿すると発熱する寒期向け素材なども。非常に多岐にわたる素材の中から、代表的な3つを紹介します。

素 材 名 詳 細
ダクロンQD 異形断面繊維の元祖でもある、デュポン開発の吸汗速乾ポリエステル繊維。UFO型の繊維断面により、綿の5倍の吸汗性と5倍の速乾性が特長です。QDはQuick Dryの略。元祖だけにお値段少々高め。
クールマックス デュポン開発の吸汗速乾ポリエステル繊維。異形断面「テトラチャンネル」が持つ4つの溝が、体から発散される汗を毛細管現象で排出。速乾性に加え、夏場は気化熱による冷感効果も実感します。
ウィックロン モンベル開発の吸汗速乾ポリエステル繊維。四つ山断面の繊維により吸水拡散性と通気性を実現。同社では、更に制菌性と保温性を持たせた「ジオライン」という素材もある。

     

実際の速乾性をテストしました−Tシャツ素材別洗濯テスト

 前項の写真にある、3つの素材を使ったTシャツで、実際の速乾性をテストしてみました。素材によって、体から発散された水分が繊維から発散される能力や、洗った際の乾燥時間は異なるのでしょうか?

1 今回テストで使用する3品です 2 一度洗って馴染ませます
実験に使うTシャツ3種 包装を剥がすと見た目はほぼ同じ
3タイプのTシャツを吸水・脱水・天日干しする中で比較テスト。右から綿100%、綿・ポリエステル混、高機能繊維ダクロンQD70% どれも新品の為、包装を剥がしたら一度洗濯・乾燥し繊維を馴染ませてテストします。

3 綿100%Tシャツです 4 綿75%・ポリ25%混Tシャツです
タグの拡大写真 タグの拡大写真
最初は綿100%Tシャツ。肌触りは一番柔らかく、ごく普通の一般的なTシャツです。 次は綿75%・ポリエステル25%。特に夏場を中心に3シーズンは普通に見掛けます。

5 ダクロンQD70%Tシャツです 6 各段階で重さを量ります
タグの拡大写真 デジタル秤で計量中
最後はポリエステルでもちょっと特殊な、ダクロンQDが70%と綿30%。スポーツ・アウトドア用品店なら見掛ける高機能品。 テスト前・脱水後と天日干し1〜3時間までの各段階で、3タイプそれぞれの重さを量り、結果を比較します。

7 3種類一緒に洗濯して 8 干して時間が来たら重さを計測
初期状態で重さを量ったら、一緒に洗濯して同じ状態でテスト開始。脱水後の重さも量ります。 その後物干し竿に干します。3時間後までの毎時各々の重量を量って記録します。

     
実施時期 2004年5月
14:00〜17:00
天気 曇り時々晴
風:時々微風
気温状況 気温:25.2度
湿度:62%
使用品 1. ヘインズ 100%COTTON Tシャツ Lサイズ(綿100%)
2. ヘインズ COMFORT-BLEND Tシャツ Lサイズ(綿75%、ポリエステル25%)
3. ダンロップ ダクロンQD ドライTシャツ Lサイズ(ダクロンQD70%、綿30%)
測定条件 素材の違う3種類の新品Tシャツを同時に洗濯し、天日干しして各々の時間の重量を計測。各時間ごとの差分から保水量・感想度合いを測る。
重量計測はテスト前・脱水後・乾燥1時間後・同2時間後・同3時間後の5回。
なお使用品は全て新品で、馴染ませる為にあらかじめ1回洗濯・乾燥させる。
実測結果
素材 実験前 脱水後 1時間後 2時間後 3時間後
重量 重量 重量 重量
綿100% 126g 236g 110g 164g 72g 132g 32g 128g 4g
綿75%
ポリエステル25%
140g 216g 76g 154g 62g 140g 14g 140g 0g
ダクロン70%
綿30%
132g 186g 54g 138g 48g 132g 6g 132g 0g

Tシャツ素材別乾燥率
実  感 脱水直後:
実験前は一番軽かった綿100%が一番重いのが、手に持った時点で実感。

天日干し1時間後:
ダクロンQDは触った感じでうっすら乾き残りがある程度で、冬でなければこのまま着られそう。綿・ポリ混はあともう少し。対する綿100%はまだズシッと重く、まだ着るどころではありません。

天日干し2時間後:
ダクロンQDに加えて綿・ポリ混も着ても問題ないレベルに。この時点でもまだ綿100%は湿っているのがハッキリわかります。

天日干し3時間後:
3時間経ちテストを終えますが、綿100%はまだ微妙に乾き残りがあります。

 もちろん、アトピー性皮膚炎などの理由で、化繊を使った高機能繊維品を着ることができないといった場合もあります。そのような家族を持つ場合、衣料品の備えはより多めにする必要があるでしょう。

 当座の命が助かっただけでも十分で贅沢な悩みというもの。しかし、その後の事を考えると必要になる備え、それが被災生活用品。ジャージ・ハイテク繊維品など、衣類を非常持出か備蓄品に1セット入れておくと、後のこうした場面で助かるのではないでしょうか。

     
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