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発災〜避難時の対処

救急車が来るまで待つだけ・病院や救護所まで運ぶだけ、では助かりません   ポイント
助かるはずの命を救う救命処置の必要性   追補'09/09/09

 発災当初の混乱もようやく一段落。しかしふと見ると、家族や隣近所の人が大ケガをしたり意識を失っている・・・。災害時は、通信途絶や瓦礫・冠水など交通路の遮断で、救急車などとても期待できません。そこで、自治体の応急手当指導員もしている筆者が声を大に言いたいのは、助かるはずの命を救う応急手当です。

ただ待って見ているだけでは、助かる命も助からない

何もしなければ、助かる確率は驚くほど低い

救急車が来るまでの全国平均は6分36秒  平時でも、119番通報を受けてから救急車到着まで、全国平均で約7.7分(総務省消防庁 2009年9月発表速報値)掛かります。傷病者を見付けてから通報までの時間を加えれば、10分を越えるかもしれません。しかも、出動件数の増加や交通渋滞で、到着時間は年々増加傾向にあります。

心肺蘇生を行わない場合の救命率グラフ  とはいえ、救急車が来てくれるのだから、私達一般市民は心配しつつも、到着するのをひたすら待ってしまいがちです。でも、それでは助かる命すら助かないというのが、意外に知られていない現実です。

 心臓や呼吸が止まった人が助かる確率は右のグラフの通りで、救急車が来るまで何もしない場合、倒れてから3分後でわずか20%少々、救急車が着く頃には10%程度に過ぎません。

 時間が経つほど、命が助かる確率(救命率)は急激に低くなります。ですから、救急車が来るまでただ見ているだけでは、残念ながら助かる命も助かりません。

脳は心停止から3分で死に始める−時間との勝負

脳はわずか3分で死に始める  心肺停止状態になって、最も急を要するのは脳です。脳細胞は心停止からわずか3分で死に始めます。対して、平時の救急車到着まで6分半。どんなに急いでも間に合いません。災害時であればますます困難でしょう。

 脳細胞は血液中の酸素とブドウ糖が動力源。脳梗塞などと同様、血流が止まって酸素や栄養が欠乏する「虚血状態」になると、すぐ死んでしまいます。脳は一度損傷したら再生能力がほとんどないので、最も急いで守らなければならない器官の一つです。

ひとこと:  末梢神経に比べ、再生能力が非常に弱い中枢神経ですが、近年の再生医療界では、中枢神経の再生要因が複数解明されつつあります。日本人の研究者も多数関わっていますが、まだまだ研究段階。実用化に至るかどうか、今後に注目が集まっています。

 たとえ病院に搬送でき、救命医療で生命維持できても、脳が死んで障害が残ったり植物状態となっては、社会復帰などとても望めません。応急手当程度で済まない人の場合、ただ見ているだけ・ただ救護所に運ぶだけでは、助かる命も助からないのです。

     

助かるはずの命を救うのは、そばにいる人での救命処置

一刻も早い救命処置で、助かる確率は大きく変わる

心肺蘇生を行った場合の救命率グラフ  救急車を呼ぶべき事態で、救命処置をしなければ、助かる可能性はかなり低いのがお判り頂けたと思います。では、救命処置をした場合、どれくらい違うのでしょうか?

 右のグラフは、先に述べた救命処置をしなかった場合の救命率に、救命処置をした場合を加えたものになります。同じ経過時間でも、救命処置をした場合としなかった場合では、助かる確率は2倍以上変わります

 助かるはずの命を救うためには、「バイスタンダーCPR」つまり、そばに居合わせた人による一刻も早い心肺蘇生が非常に大切なのです。

救命の連鎖−命のリレーの第1走者は私達自身

救命の連鎖  右の図は、助かる命をより確実に次に繋ぐための「命のリレー」を図にしたものです。

 119番通報をしたら、救急隊や医療従事者に引き継ぐまでの間に、早い応急手当を行うなら、助かる可能性をより高くして命を繋ぐ事ができます。つまり「救命の連鎖」です。命のリレーの第1走者は、他ならぬ私達自身なのです。

 筆者は応急手当指導員なので、消防署で救急隊員から話を聞く事がありますが、119番通報を受けて出動し、現地に到着してみると、何の救命処置もされていない場合が大半というのが現実だそうです。助かるはずの命を救うには、初期の1分1秒の間が最も大切。なのに、何もしなかった・できなかったというのは何とも惜しいものです。

     

一般市民で行う事のできる一次救命処置

 私自身も救急車を呼んだり・呼ばれたりした事があるので「どうすればいいか知らない」「下手な事をして悪くさせたら・・・」という不安もよくわかります。それなら、ご家族や愛する人のために、正しい救命処置の方法を憶えてみてはいかがでしょう?

 救急隊が来るまで、または災害時に医療機関へ搬送するまでの間にできる救命処置を一次救命処置(BLS=Basic Life Support)と呼びます。これは一般市民が行っても問題ないもので、日本国内では緊急時に行う場合には医療行為に該当せず、法的な責任を問われないとされているので、心配はご無用です。

 基本的な一次救命処置には、以下に挙げるものがあります。

1 気道確保 2 人工呼吸
生命維持の第一歩である、呼吸の経路を確保するために行います。 正常な呼吸ができない・不十分な場合、換気を行います。次の胸骨圧迫の方が大切です。

3 胸骨圧迫(心臓マッサージ) 4 AEDによる除細動
止まった心臓を外から手動でポンプさせ、脳をはじめ臓器に血流を送るために行います。 痙攣して血液を送り出せない状態の心臓を、電気ショックでリセットさせるために行います。

5 止血 6 異物除去
出血をくい止め、大量出血による危険なショック状態を防ぐために行います。 物を飲み込むなど、気道閉塞で窒息した際に、詰まった異物を取り除くために行います。


 これらの他にも、骨折や火傷などの外傷の手当、悪化防止と苦痛軽減のための体位管理、安全かつ限られた状況での搬送法など、様々なものがあります。上に挙げた、基本的な救命処置の細かいポイントについては、今後紹介してゆけたらと思います。

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