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防災対策はじめの一歩

災害予知は有用でもまだまだ研究段階、鵜呑みにすると思わぬデメリットも   ポイント
予知だけに頼らない防災意識を持とう   追補'06/9/16

 天気予報のように、災害も予報してくれたら・・・。確かに、そうなってくれたら非常に役立つ上に安心です。災害の前兆現象つかむ災害予知の取り組みは、国家機関から民間研究組織、果ては個人まで様々なレベルで行われていますが、信頼できるのでしょうか?現状はどんなもので、どう取り入れてゆけば良いのでしょうか?

本ページの内容は、拙著・ラジオ番組・防災講演で話す内容を元にしています
MP3 FMボイス・キュー 防災NOW インターネット放送「予知に頼らない防災意識を持とう」

災害予知って、どんなもの?−主な概略

 災害予知には主に以下の分野で、国から個人まで様々な取り組みがなされています。各手法の詳細はそれぞれに譲るとして、主な災害予知研究の概要と、取り組んでいる関係機関の幾つかを、敢えて信頼性・信憑性に関する見解を述べずに紹介します。

地殻変動観測による地震予知
国の中央防災会議は、直前予知の可能性があるのは東海地震のみとする。更に近年、予知より減災に方針がシフトしつつあり

地震予知連絡会   気象庁   国土地理院
東大 地震研究所
京大 防災研究所 地震予知研究センター
東北大 地震・噴火予知研究観測センター
名古屋大 地震火山・防災研究センター
(独)防災科学技術研究所 など
地震・地殻変動観測による火山噴火予知
こちらも既に実用化段階。これらの観測結果を元に、臨時火山情報や緊急火山情報などが出され、成果を発揮しています

火山噴火予知連絡会
気象庁 気象研究所
東大 地震研究所
東北大 地震・噴火予知研究観測センター
名古屋大 地震火山・防災研究センター
(独)防災科学技術研究所 など

     
電磁気・電波観測による地震予知研究
地殻破壊で生じるとされる電磁気を、電波観測によって捉える地震予知研究

東大 地震研究所
東海大 地震予知研究センター
電気通信大 電子工学科 早川研究室
八ヶ岳南麓天文台(アマチュア)
千葉県立行徳高校 自然科学部
NPO法人 国際地震予知研究会
環境防災研究会(個人)
トチローの地震と電磁波教室(個人) など
宏観異常現象観察による地震予知研究
災害時に起こるとされる、動植物や気象などの異常現象の「観察」による地震予知研究

東海大 地震予知研究センター
大阪大 大学院理学研究科 池谷研究室
静岡県地震防災センター
日本地震雲研究会(個人有志)
東海アマチュア無線地震予知研究会(個人)
地震発生量の信号機(個人) など

電磁気・地下水・大気イオン観測も、広義には宏観異常現象に入りますが、観測機器により定量的に計測できる分野のため、独立した分野として扱われています。対して、宏観異常現象は「地震の前にナマズが暴れる」「地震雲が現れる」といった、人による主観的な観察に基づくものを主としています。

昔からの経験則に基づいた生活の知恵である一方、現象報告の不正確さをはじめとした課題の多さから異論も多いのが現実。そのため、科学的な解明や検証がなされている最中です。最も玉石混淆の分野でしょう。
 
大気イオン観測による地震予知研究
地殻破壊で大気に放出された、ラドン・鉛などイオン濃度測定による地震予知研究

NPO法人 大気イオン地震予測研究会
岐阜大 総合情報メディアセンター 田阪教授
神奈川工科大学 矢田研究室 など

地下水観測による地震予知研究
地殻破壊で生じるとされる、地下水位変動・成分変化を観測して捉える地震予知研究

鳥取大・京大 温泉観測ネットワーク
岐阜大 総合情報メディアセンター 田阪教授
(独)産業技術総合研究所 など

 なお、2007年秋より一般提供が始まった「緊急地震速報」は、遠くで既に起きた地震を検知して知らせるシステムなので、厳密に言うと地震予知ではなく地震検知警報システムに含まれます。詳しくは 防災のポイント・提言集:災害情報はどう入手できる?−テレビ・ラジオ編 で解説しています。


     

災害予知の近年の実例 − 防災に一石を投じつつも大混乱

 ご存知の方も多いと思いますが、2003年9月、数多くの彗星・小惑星を発見した八ヶ岳南麓天文台のアマチュア天文家である串田嘉男氏が、9月中旬に南関東圏でM7.2の地震予想を自らのWebサイトに公開。これは流星観測の際に発生するVHF周波数帯の変動が、1993年北海道南西沖地震・1995年阪神淡路大震災で共通する事を発端に始めた、FM電波観測による前兆検知研究の成果でしたが、これが意外な騒動に発展したのは憶えておられる方も多いことでしょう。

2003年9月2日   「『地震前兆検知』実験観測情報 No.1057」を配信。普段は実験参加登録者にのみFAXで配信される非公開情報。しかし、この頃から既に、ネット上の某巨大掲示板群に情報の一部が書き込まれ始める。
9月7日   内容の重大性ゆえ考慮の末に、八ヶ岳南麓天文台のWebサイトに公開する。元々3つの可能性が指摘されていたものの、そのうち1つが独り歩きをはじめ、後に世間の注目を集めることに。

1057 その内容は

  • いつ?−9月16日・17日±2日間に
  • どこで?−南関東圏を85%の確率として
  • どんな?−マグニチュード7.2±0.5の本震
これを機にネット上では、この件に関する書き込み・議論が増え始める。
9月9日  
週刊朝日9/19号 週刊朝日9月19日号にこれを元にした記事が掲載
『民間研究者がFM電波で、これまでにない「異変」観測
−9月中旬M7.0以上、関東大地震説の確度』
9月11日   この頃から他メディアでもこの話題が報じられ始める
9月13日   読売・毎日・東京新聞の朝刊で報じられる
9月15日   テレビ朝日「スーパーJチャンネル」で、予報の一部だけ誇張して報じられる。
携帯電話を中心に、今回の予報に関するデマ・偽情報のメールが飛び交う。
また防災用品販社・ホームセンター・百貨店で、防災用品の品切れ相次ぐ。
9月20日   千葉県南部でM5.7の地震が発生
9月22日   20日の地震を予知の該当地震と認識した旨と、謝罪メッセージを公開。半月にわたる騒動は公式には終止符を打つ。結果的には以下の通り。
  • 時期:9月16日・17日±2日間 → 3日遅れ
  • 場所:南関東圏を85%の確率 → 予想中心より80km外れる
  • 規模:マグニチュード7.2±0.5 → マグニチュード1.5低い
※ちなみに、開設4年で550万PVを越えた当サイトも、この月だけで104万PVありました

 この一件は、一般市民には防災意識の喚起となり、研究者には予知手法に関して一石を投じた、という意味では確かに功績でした。しかし、それ以上にメディアや世間を巻き込み、当人も望まない過剰な社会不安を呼んでしまったり、派生したデマや偽情報が飛び交うなど、予知を鵜呑みにして舞い上がる事の危うさを露呈する結果ともなったのは、記憶に新しいところでしょう。


     

災害予知の現実と限界、過信することのデメリット

 災害予知は実現できれば有用であっても、現状やそもそもの役割を考えると、自ずと限界もあるようです。
  • 災害予知のほとんどの分野は、まだ実用化以前の研究段階
  • 予知できても、観測網が整った局所的な地震・火山災害にのみ限られる
  • あくまで予知で災害は止められず、やはり個々の対策は不可欠
また、災害予知に依存し過ぎると、防災への見方に両極端になるデメリットもあります。

デメリット1 健全な防災意識・自助意識が育たない
 予期せぬ事態に、できるだけ被害を少なくするよう備えるのが、危機管理というもの。ところが災害予知を過信して頼り切ったり、自助努力をしない口実に利用する危険もあるなど、健全な防災意識や自助意識が阻害される危険があります。

他人任せではなく自助努力を  「予知があるから備えはいらない」「その場だけうまくやりおおせれば良い」「当たらなかった、どうしてくれる!」と考える、他人任せでその場限りの、長続きしない防災意識は、危機管理の上ではマイナス以外の何物でもないでしょう。
デメリット2 生活バランスを崩し、精神衛生に悪影響
 災害を恐れるあまり、有り得ない完璧さを求めて極端に突っ走る人も見受けられます。特に重症化すると、美しい夕焼けや雲などの季節の彩りを、生兵法で災害の前触れと考え一喜一憂。常軌を逸して、妄想的な不健康さに陥るだけに注意したいものです。

バランスにはご用心  普通の市民にとって家庭の危機管理は、主従でいえば明らかに従。竹内まりや宜しく「毎日がスペシャル」ならぬ「毎日が非常事態」で、生活に支障が出ては本末転倒です。ゆめゆめバランス感覚を失わないよう、どうぞご注意を。


     

災害予知にだけ頼らない、健全な防災意識・危機管理意識を持とう

 仮に、詳しい天気予報を聞けなくとも、雲行きが怪しければ、傘や雨合羽を持って出掛けるでしょう。また、自宅周辺での泥棒・不審者の徘徊情報がなくても、出掛ける際は、戸締まりをすることでしょう。

 災害予知が技術的・精度的に確立されるよう、研究機関・研究者の方々の動向には、今後も期待しています。様々な種類の突発災害を、天気予報レベルの確度で予知できれば、まさに世紀の大発明です。しかし予報は予報、聞く側が対応できなければ意味がありません。予報があろうとなかろうと、災害多発国日本に暮らす私達は、いざ被災しても途方に暮れない程度に粛々と備える、そんな防災意識・危機管理意識を持っていたいと思いますが、皆さんはいかがでしょうか?

     
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